atelier〜other side2


 「今年の蚊は気が早いんやねえ。軟膏みつからんわ。」

 千夜はごそごそと寝室のたんすを探っていた。洋二郎はその不自然に白いうなじを凝視する。

 「千夜、」

 「清ちゃん、あの痕残るかもしれんね。私、ちょっと買いに出かけるわ。」

 すっと横を通り過ぎようとする千夜の手を洋二郎は掴んだ。

 その手をそのままにしながら、しかし千夜は洋二郎の方を見ようとはしない。

 「千夜」

 呼びかけながらも洋二郎はずっとその白い肌を見ている。

 「傷つかんと思うてるの?」

 腕には力が入っていない。それなのに体は小刻みに震えていた。

 「あなたにはなに言うても、いつも通じへん。私が好きやいうても嫌いや言うても、どうせどうでもええんでしょう?好きや、好きや、ってわからんとでも思うてるん?」

 きっと洋二郎を振り返った千夜の目に涙はない。
 もしもここで泣くような女なら自分は千夜を好きにはならなかったと洋二郎は明後日なことを考えていた。

 「好きなのはお前だけだ。」

 千夜はふっと笑った。

 「その言葉の重みそのままに、私を汚せもせんくせに」

 今度こそ本当にするりと腕の中を抜けた千夜を洋二郎は追わなかった。
 代わりに少しその指を内側に曲げた。


 「先生」

 といって、振り返った清の後ろに薄紅色の花びらが舞っていた。
 薄紺の着物と象牙色の肌にその色がとてもよく似合うと、洋二郎はただそう思っただけだ。
 そして何とかこの光景を残しておけないものかと思案していたとき、返事のない洋二郎を不審に思ったのか、清がそっと顔を近づけてきた。

 洋二郎はただ、自分の色を如実に表現する真っ白い紙が欲しかっただけ。

 たとえ誰がそれを知っていても。


 いつもはわりときびきびしている洋二郎が、考え込むように眉を顰めて伏せ目になる、その表情が好きだった。だから呼びかけて振り返ったその先に、彼のその顔があったから、もっと近くで見てみたいと思ったのだ。
 こちらなど見えていないだろうことを。そしてそっと近づいた。


 「愛、してほしいか?」

 「・・・して、ほしくありません」

 強く望みながらも、触れるなと拒む瞳。



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