それも日常


 イチコは昔から、家の庭が好きだ。
 いろいろなものを植えて、もしくは埋めて遊んでいる。
 放っておくと、一日じゅう庭で遊び続けたりする。
 今一番のお気に入りはキイチゴ。
 小さくて棘があって、食べられる。
 なかなかおいしい。
 イチコは植物を育てるのが、得意だ。


 朝の散歩のついでに、ふと覗き込んで。
 息を吐いた時には、すでに頭のてっぺんから足の先までずぶぬれだった。
 水色のホースの先端が、まっすぐに向けられている。
 音を立てる水。水があふれる。
 「おはよう。キイチ」
 したり顔のイチコ。
 その悪戯な顔も、許さないわけではない。
 でも、たまには仕返しを思いついてしまう。
 どういう訳か、心の中で謝ってしまうのだが。


 フェンスを飛び越え、ホースを奪い取る。
 悲鳴を上げるイチコ。
 頭から冷たい水を浴びせる。
 必死で逃げようとするイチコ。
 するりと冷たい感覚が突き抜ける。
 大きな目をぐるぐると見開くイチコ。
 笑い声。笑いすぎて、涙が出そうだ。
 気持ちがいい。


 「キイチの馬鹿。阿呆」
 「本当に?」
 二人ともずぶぬれだった。
 「……嫌いだ。もう来るな」
 たっぷりと水気を含んだ髪をそのままに、イチコが悪態を吐く。
 濡れた服がくすぐったいのか、軽く鎖骨のあたりを引っ掻いて。
 「本当に?」
 ぺたりと頬にはりついた髪に、触ってみたい。
 聞いているのかいないのか、イチコは背を向けて蛇口に向かう。
 その後ろ姿に、ホースを向けた。


 キイチゴの実をたくさん、力任せに口に詰め込まれたのは、ちょうどその十六秒後だった。


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