こぼれたら夏
日焼けしたばかりの背中こすられて悲鳴をあげた芝生とわたし 天国という名のホテル まひるまの骨はどうしてこんなに甘い ていねいに脱がせた下着ていねいに畳むあなたを畳んでみたい 花火(だん)太鼓(ばららん)降って(だあん)くるもの(ばらら)からは逃げたい 捨て台詞なんて必要ないくらいぶちまけられている鳩サブレ 投げ捨ててみたいな 海に その肌の桜色ならきっと映えるね 鳳仙花のようにわたしのこの喉に火薬をつめてもらえませんか ささくれに雨がしみこんだとしても描きつづける半円 笑え こいびとはみんな眠りについたからドラゴンドライブ 月に行きたい 今きみの二重まぶたをいろどった花火 泣くのは後にしないか 流水にさらす眼球ほんとうにあなたの正しさにはまいります |
愛嬌もないくせエリカの生え際はわた毛みたいでもう、帰ります 五日間連続の雨きもちよく晴れたらお別れいたしませんか 虹色のモザイクタイル踏みつけるわたしはいてもいなくてもいい わたしにも夢と希望をふりかざす赤いズボンのねずみが踊る 血が出てる気がするけれどどこからか分からないけど痛い 助けて さよならの意味が全然わかんない映画雑誌にスープをこぼす 泣かせるか泣かされるかってだけでしょう濃縮還元オレンジジュース 指だけをからめるダンスしあわせは耳をぼんやりさせるのですね かなしみを演じ続けた家元とAlfa Romeoが沈む水底 今日もまたみんなに愛されますように練り歯みがきの真ん中を押す この胸の機械じかけが錆びついて笑い声までかすれてしまう こいびとの膝の裏から亜熱帯めいたにおいがこぼれたら夏 両耳をふさぐあなたが聞いている潮騒 そっと額をなめる めだりおんななつあつめててにいれたゆうしゃのつるぎ 救えます、か |