ないものねだり

 待つよりも待たせたいのに真夜中のうたた寝 足の届かない椅子

 わたしだけ見て弓なりの背すじ見ていまだに硬いふくらみを、見て

 従順なうさぎがほしいちぎれ雲いくつかわたしのものにする朝

 蝶々のかたちの薄いチョコレートふたりで一枚かじる もう朝

 ひかりこぼれる向こう岸なら見えるけど泳げないんじゃない 泳がない

 耳の奥深くに蜘蛛の子を散らすような囁きだった 帰るな

 似合わないことならちゃんと分かってる(けど)甘すぎる液体リップ

 お互いの母星を探す夜半の春ないものねだりがとても、好きです

 今日だけはならずものって言われてもいいよタンポポまみれの背中

 好きなひとできたんだって初夏のあやめの風の橋 通りゃんせ



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