ため息の湿度 プライドが、ぱきりと折れる注射液ゆれるアンプルみたいに折れる 容赦なく押しつけられる熱さには従う竹の細工みたいに 失恋はもっと苦いと思ってたオペラにきゅんと突き刺すフォーク 百合の花粉たっぷりつけたくちびるを咎め合いたいおんな友達 好きになっちゃいけないひとが世の中に何人いるか数え 耳鳴り ふたりでもひとりでもいい下り坂あなたのためになんか泣かない 事務的にきみがこぼしたため息の湿度の高さに気づく だめだよ 気づかずにいられたならば報われることは分かっているけれど、熱 必要のないものばかり摂取する体にうんと注ぐカフェイン 終章にたどり着けない道だって気づいたままでどこまで行くの 死ぬまでにつきたい嘘があるという美しい老人の横顔 いつどんな終わりがくるの神様の箱庭(あなただけ抜け出した) ふれることゆるされるならトランプを切る不器用な指のささくれ |
きみの目の水晶体をすり抜けるいちばんきれいなものになりたい くり返すことでいつかは嘘になるならば「さびしい!」連打するから あくびしか出ない みんなに愛されるためにはここで泣くだけなのに きみの好きなひとがやさしいことくらいわかる運針ゆびでたどれば 予想っていいわけをして願いごとこぼしてしまう柔いこいびと ふれられた場所から芽吹く熱にまだ追いつけなくてきしむ動脈 無視できたはずのあなたの目も腕も言葉も今さら響く ばかもの |